遺産分割とは
相続人が複数いる場合、相続が開始した時点では、相続財産は相続人全員による共有状態にあります。これを各相続人の相続分に応じて分配することを遺産分割といいます。
遺産分割についての民法の基準
相続人の実質的公平を図るため、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」とされています。
- 遺言がある場合・・・遺言に従って分割します。ただし、遺言に記載された内容が、相続分の指定のみであったり、分割方法の指定のみであったりした場合には、遺言書の内容を踏まえたうえで、遺産分割協議を行う必要があります。
- 遺言がない場合・・・相続人全員による協議により分割します。
- 上記の場合に協議が整わないか、協議をすることができない時は、各相続人は家庭裁判所にその分割を請求することができます。
無事に遺産分割が終了しますと、各相続人が分割により取得した相続分は被相続人の死亡と同時に取得したものとされます。
遺産分割の種類
<現物分割>
個々の遺産を現物として相続人に分配する方法です。
<換価分割>
現物分割が不適当または不可能な場合には、遺産を一旦相続人全員に法定相続分どおりに相続登記した上で、売却し、その代金を相続人に分配する方法です。
<代償分割>
法定相続分よりも多く遺産を取得する相続人が他の相続人にその代償として、他の相続人に対してその不足分を金銭で支払う方法です。
遺産分割が禁止される場合
各相続人は、原則としていつでも自由に遺産分割協議により遺産分割をすることができます。ただし、下記の場合は遺産分割が一定期間禁止されますので注意が必要です。
- 被相続人が、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁じた場合。
- 家庭裁判所に遺産分割を請求した場合で、特別の事情があるために、家庭裁判所が期間を定めて、遺産の全部又は一部について分割を禁じた場合。
- 相続人間の協議によって、5年を越えない期間をさだめて、遺産分割を禁止することができます。
- 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った不相当な対価の有償行為の対象となった財産
遺産分割協議のポイント
相続人についての注意点
- 相続人全員で協議しなければなりません。ただし、遺産分割協議書を作成し、全員に次々と署名押印してもらう持ち回り方式でもよいとされています。
- 相続人を1人でも除外すると協議は無効になります。行方不明者がいる場合には家庭裁判所に財産管理人の選任を申し立てて、代理人を立てなければなりません。
- 相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者は単独では遺産分割協議に参加することができません。未成年者自身が法定代理人の同意を得て参加するか、または法定代理人が未成年者を代理して参加することになります。法定代理人には、原則として親権者がなります。ただし、親権者自身も相続人の場合には、未成年相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に特別代理人を選任してもらうことになります(※1)。
- 胎児がいる場合は生まれてから協議を行います。生まれる前に代理人を立てることはできません。死産の可能性もあるからです。
- 特別受益者である相続人が「相続分のないことの証明書」(※2)を提出した場合にはその相続人抜きで協議ができます。
- 協議分割に反対する相続人がいる場合は、その相続人だけに法定相続分を与え、それ以外の相続人で協議分割する方法でよいとされています。
- 遺産分割終了後に認知された子(非嫡出子)がいる場合には、その子の相続分相当額を金銭で支払えばよいとされています。遺産再分割の煩雑さを回避するためです。
(※1)特別代理人の選任申し立ての際に用意する書類
- 特別代理人選任申立書
- 未成年の相続人の戸籍謄本
- 親権者の戸籍謄本
- 特別代理人候補者の戸籍謄本、住民票
- 遺産分割協議書(案)
(※2)相続分のないことの証明書(特別受益証明書)
- (原則)相続分を越える特別受益を受けている相続人には具体的な相続分はなく、遺産を取得できません。
- 証明書には署名と実印の押捺が必要です。印鑑証明書を添付します。
- 方式、様式の定めはありませんが、最低限記載すべき事項は(イ)贈与を受けた時期(ロ)被相続人から生計の資本として既に財産の贈与を受けており、被相続人の死亡により開始した相続については相続分のないことを証明証明する旨(ハ)日付、住所、氏名の3点です。
相続財産についての注意点
遺産分割協議が成立するまでの間、各相続人は自分の財産と同様に相続財産を管理しなければなりません。
<相続財産の評価の方法>
時価で評価するのが原則ですが、相続人全員が同意すればどのような方法で評価してもよいとされています。たとえば、不動産の評価方法としては次の様なものが考えられます。
- 近隣の実際の取引価格を参考にする。
- 固定資産税の課税標準額から推定する。
- 地価公示法による公示価格から推定する。
- 借地になっている場合は、上記の方法で求めた評価額に国税局長の定める借地権割合(路線価図に記載)を乗じて算出する。
その他の注意点
- 原則として、一旦成立した遺産分割協議はやり直しができません。ただし、相続人全員の合意で既に成立した遺産分割協議を解除し、改めて協議をすることができるとした判例があります。
- 遺産分割協議が一旦成立した後に、別の相続財産が発見される場合があります。そのような場合は最初の協議を有効とし、新たに発見された財産についてのみ改めて分割協議を行うことになります。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議が無事終了したら、その内容を書面にします。これを遺産分割協議書といいます。この作成は義務づけられているわけではありません。しかし、相続を原因とする登記申請の添付書類にもなりますし、なによりも後日の紛争を防止するための証拠書類となりますので作成しておくほうがよいでしょう。公正証書にすればより安全です。
記載内容についての注意点
誰がどの財産を相続するのかを具体的に書きます。また、遺産分割協議終了後に発見された遺産は誰に分属するかという点も明確に記載します。
1.預貯金について必ず記載すべき点
- 金融機関名
- 支店名
- 口座の種類
- 口座番号
- 最終残高(相続発生時の残高)
2.不動産の表示は登記簿記載の通りに書きます。住居表示は不可。
3.住民票又は印鑑証明書の通りに書きます。
体裁についての注意点
- 相続人全員が実印で押捺しなければなりません。相続人全員の印鑑証明書を添付します。
- 協議書は相続人の人数分を作成し、各自が保管します。
- 協議書が数ページに亘るばあいには、相続人全員の割印が必要になります。
- ワープロでの作成も可能です。
協議が整わない場合は?
円満に協議が成立すれば一番良いのですが、人間のすることですから紛糾することもあり得ます。もうどうにも当人同士の話し合いだけでは決着がつかない場合には下記の方法で第三者に間に入ってもらって折り合いをつけることになります。
遺産分割調停を申し立てる
1.相続人全員を相手方として、相手方の居住住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。ただし、当事者全員が合意すれば合意の対象となった家庭裁判所に申し立てることもできます。
2.申立書の受付日から1ヶ月半ないし2ヶ月先の日に第1回目の期日が指定され、相手方に当日の出頭を求める呼出状が送付されます。
3.第1回目の期日に先立ち、家庭裁判所から争点把握のための照会事項書が送付されますので、それに必要事項を記入して家庭裁判所に送付します。
4.実際に調停が始まりますと、家庭裁判所において裁判官1名と調停委員2名以上で構成される調停委員が、当事者から調停に至る交渉の経過を確認したり、分割に関する意見を聴取しながら話し合いを調整します。第1回目の調停期日では相続に関する基本的な事実関係の確認に重点がおかれます。
5.話し合いが整うと、調停調書に結論が記載され調停が成立します。この調停調書は確定判決と同様の効力を持ちます。
遺産分割調停申立の際に必要な書類等
- 家庭裁判所所定の遺産分割調停申立書
- 当事者目録・・・相続人の他に遺言執行者その他の利害関係人を記入します。
- 申立人の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本、住民票
- 遺産目録
- 遺産に不動産がある場合は、不動産登記簿謄本、固定資産税評価証明書
- 遺産に預貯金がある場合は、現在残高証明書
- 郵便切手
遺産分割審判
調停が整わない場合には審判に自動的に移行します。
1.裁判官は職権によって証拠調べ、相続人や相続財産の確定を行い、相続分に応じて分割方法の決定を下し審判書を出します。
2.審判で出された結論に不満がある場合には審判書を受け取った日から2週間以内に高等裁判所に抗告することができます。
※審判が確定するまで相続財産を相続開始時の状態に保つために、「審判前の保全処分申し立て」をしておくとよいでしょう。

