相続財産の調査方法
相続人は、相続開始の時から被相続人の一身に専属したものを除き、故人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。従って被相続人の借金も相続の対象となります。相続人が複数いる場合には相続財産は共有となります(民法899条)。
一身専属的な権利義務とは
- 使用貸借契約上の借主の地位・・・借主の死亡により契約は終了します。
- 委任契約上の地位・・委任者又は受任者の死亡により契約は終了します。
- 扶養請求権・・・扶養を受ける権利を処分することは禁じられています。
- 恩給受給権
- 身元保証債務・・・ただし、何らかの損害が発生して金額が確定している場合には通常の金銭債務に転化しているので相続の対象となります。
具体的な調査方法
相続財産については下記のような調査をしたうえで財産目録を作成することになります。
- 銀行に行く・・・預貯金の残額調査、貸し金庫の存在に注意
- 登記所に行く・・・不動産登記簿謄本の取得、登記簿の閲覧
- 友人関係、兄弟、親類に聞く
- 証券会社、保険会社に聞く・・・株券や保険証券の存在に留意
- 債務者に聞く・・・特に事業を行っていた場合には注意
- 新聞公告(死亡を原因とする債権債務確認公告)を出す
- 被相続人が親しくしていた専門家(税理士、弁護士等)に聞く
相続財産(預貯金)
銀行預金や郵便貯金はもちろん相続財産となります。金融機関から被相続人の死亡日の残高証明書を取り寄せて預貯金の金額を確定させます。では払い戻してもらうにはどのような手続きが必要なのでしょうか。先ず、被相続人の預貯金は金融機関がその死亡を知った時点から口座取引が停止となります。各金融機関によって取り扱いは異なりますが、必要書類を提出しなければ、名義変更や払戻しには応じてもらえません。以下では、実際に必要な書類を紹介します。
なお、必要な書類は金融機関によって異なりますので、事前にご確認願います。
遺言書がなく、遺産分割協議終了前の場合
- 相続人全員が捺印した同意書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の出生から死亡までの身分関係の変遷を明からにするために必要な全戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
遺言書が無く、遺産分割協議によって預金者が変更になった場合
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の出生から死亡までの身分関係の変遷を明からにするために必要な全戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
自筆証書遺言ならある場合
- 金融機関所定の相続に関わる依頼書
- 被相続人が死亡したことを示す除籍謄本その他の公的証明書
- 被相続人の出生から死亡までの身分関係の変遷を明からにするために必要な全戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本、住民票(発行後3ヶ月以内)
- 相続人全員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 相続人全員の署名、捺印のある取引口座解約依頼書
- 遺言書またはその写し
公正証書遺言があるとき
- 金融機関所定の相続に関わる依頼書
- 公正証書遺言の正本又は謄本
- 払い戻し請求者が公正証書遺言に記載された遺言執行者であることを証明する書類(印鑑証明書、運転免許証等)
- 上記遺言執行者が相続人である場合には戸籍謄本も必要
- 預金通帳、届印、キャッシュカード
公正証書遺言は法律の専門家である特殊な公務員の公証人が作成するので非常に信用性が高いといえます。しかし、金融機関の対応は、自筆証書遺言同様慎重なものになるようです。
相続財産(不動産)
不動産は当然相続財産となります。法務局で登記簿謄本を取得したり、登記簿を閲覧するこにより当該不動産の権利関係を把握します。ただし、登記簿上の権利関係は実際の権利関係と必ず一致するとは限りませんのでご注意ください。また、市町村役場の資産税担当課窓口で当該不動産の固定資産評価証明書も忘れずに取得しておきましょう。
評価方法
- 土地・・・市街地の土地は「路線価図」で、市街地以外の土地は「評価倍率表」で評価します。税務署で調べることができます。→路線価、評価倍率は国税庁のホームページで調べることができます。
- 建物・・・国税庁の「財産評価基本通達」によれば、固定資産税の評価額に倍率1.0を掛けて評価することとされています。
相続による所有権移転登記に必要な書類
相続登記は、登記権利者である相続人の単独申請によってなすことができます。
<遺言による相続登記の場合>
- 遺言書
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 権利を取得する相続人の戸籍謄本・抄本
- 権利を取得する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書等
<遺産分割協議による相続登記の場合>
- 被相続人の12歳位から死亡時までの戸籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本・抄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 権利を取得する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書等
<法定相続分のままの相続登記の場合>
- 被相続人の12歳位から死亡時までの戸籍謄本等
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 各相続人の戸籍謄本・抄本
- 遺産分割協議書
- 各相続人の住民票
- 固定資産評価証明書等
不動産の調査の方法
登記簿謄本と固定資産税評価証明書は絶対に必要です。市町村役場の税務課にある名寄帳で被相続人所有の不動産を調べることができます。また、市町村役場から送られてくる固定資産税の請求書も評価の際の参考とすることができます。
相続財産(その他)
株式
各証券会社の担当部署に連絡を取り、名義書換の手続きを行います。その際には下記のような書類が必要になります。
- 株式名義書換請求書
- 株券
- 被相続人の除籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書を添付した遺産分割協議書または遺言書
自動車
被相続人の住所地を管轄する陸運事務所で移転登録の手続きをします。その際には下記のような書類が必要になります。
- 陸運局所定の移転登録申請書
- 自動車検査証
- 自動車検査証記入証明書
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書を添付した遺産分割協議書または遺言書
- 自動車損害賠償責任保険証
- 保管場所証明書(使用の本拠が変わる場合)
- 自動車税申告書(他の管轄の陸運局に移転する場合)
借地権、借家権
被相続人を権利名義人とする土地・建物の賃借権は相続財産となります。
生命保険金
生命保険金の受取人が誰になるかによって相続財産となる場合とならない場合があります。
- 保険契約者(被相続人)が自らを受取人とするか、受取人を全く定めていない場合は、被相続人が保険金請求権を取得し、その権利を相続人が承継することになるので、保険金請求権は相続財産となります。
- 保険契約者(被相続人)が自らを被保険者とし、自己の相続人を具体的に氏名をあげて受取人としている場合には、被相続人死亡と同時に保険金請求権は、受取人に指名された相続人の固有の財産となります。従って、相続財産となりません。ただし、この保険金請求権は一般的に特別受益とみなされます。
<生命保険金の請求方法>
1.保険会社へ連絡。死亡の事情(被保険者氏名、死因、死亡月日)を説明し、支払の請求を行うための書類を送ってもらい記入する。
2.用意する書類等
- 保険証券
- 生命保険金請求書
- 保険会社所定の死亡診断書
- 被相続人の除籍謄本または住民除票
- 受取人の戸籍謄本(発行後3ヶ月以内)
- 受取人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 保険金請求人の身分を証明するもの
- 契約時の印鑑
- 振込先口座番号
- 警察の事故証明や死体検案調書の写し(死因が事故や自殺等の場合)
- 事故を報道した新聞の記事など(死因が事故や自殺等の場合)
3.請求期限・・・死亡した日から2ヶ月以内に請求します。3年を経過すると失効してしまうので注意しましょう。
死亡退職金
死亡退職金の受給権者について法令または労働協約・就業規則が、民法の相続順位と異なる定めをしている場合には、死亡退職金受給権は相続財産となりません。受給権者が自己の固有の権利として取得します。
一方、受給権者を単に相続人と定めていたり、受給権者を定めていない場合の死亡退職金は相続財産となります。
<支払請求方法>
■請求先・・・被相続人が勤務していた会社
■必要な書類
- 相続人の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本等
電話加入権
加入承継の手続きには次のような書類を用意する必要があります。
- 電話加入承継申込書
- 被相続人の除籍謄本または死亡診断書
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の印鑑証明書
祭祀財産
位牌や仏壇及び墳墓等の祭祀財産は相続の対象となりません。被相続人が遺言その他で指定した者が承継します。指定がない場合には慣習に従って承継人が決まり、慣習が明らかでない場合には家庭裁判所の定めた者が承継人となります。なお、承継人は必ずしも相続人に限られません。
香典
相続財産にはなりません。先ず葬儀費用に充当して、なお余りがある場合には相続人間で分配するのが一般的です。

